【 九州の奥地にひっそりと・・・。ナゾのお茶釜炒り茶。 】
釜炒り茶・・・かまいりちゃ。
聞き慣れないお茶ですよね?
このお茶は、お茶の大生産地・静岡や名産地・京都宇治ではほとんど作っていません。
九州の奥地、佐賀や熊本や宮崎の山の中でしか作っていない幻のお茶です!
中国から伝わった釜炒り製法で作るお茶です。
どうして生産地が九州に限定されているかというと、元々この製法が伝わった場所が九州だったから。
日本のお茶は中国大陸から伝わってきて、時代の中で進化を続けて今の日本茶になっています。
お茶に詳しい方のほとんどの方がこう思っています。
「鎌倉時代に栄西によって伝わったのが日本茶の始まりだよね」
これは、半分正しくて半分間違い。
実は奈良時代にすでに伝承されてきたとの記録があります。
また最澄や空海もお茶を持ってきていたようで、比叡山にはその面影が残っています。
何で栄西の記述が大きくクローズアップされるかというと、彼が「喫茶養生記」という書物を書き時の幕府に進呈したからです。
この本は今でも講談社から出版されています。お茶業界だけでなく、日本史においても有名な本なのです。
記録が残っているって強いですね!
話が逸れましたが。。。
お茶が何回にも渡って中国から伝わってきた事は理解してもらえたかと思います。
その中で、釜でお茶の葉を炒って作る方法が伝わってきました。
中国、明王朝の頃に釜炒り茶が大陸で流行っていたのでその頃に伝わったのでしょう。
釜炒り茶はその製法を今に伝えるお茶です。
日本茶の中でも、最も中国茶に近いお茶。それが釜炒り茶です!
【 釜炒り茶の作り方 家庭で出来る自家製のお茶 】
釜炒り茶は、お茶の葉を釜で炒って作ります。
イメージが難しいかと思いますので、ちょっと想像力を全開に、昔の農家の生活を想像してみましょう!
昔は昔、戦前の家庭の土間をイメージしてみてください。
今と違ってガスも電気もないですね。水は井戸から汲んできます…。
土間にはかまど。釜が乗せてあり、下は薪で火を起こしています。
竹の筒で息を吹き込みお米と味噌汁の朝ご飯…。
こんな厨房です。
昔はお茶は各家の庭に植えてあり、初夏になると適当に摘んで自家用のお茶にしていました。
今のように工場で蒸そうにも井戸から水を汲んでくるのも大変です。
あるもので作りたいのです。
そこで、中国人直伝の方法で自家用のお茶を作る事にしましょう。
釜は普段使う物が既にあります。
お茶の葉は庭に生えているので、摘んできます。材料と道具は揃っています。
お米の釜は、今日はお茶用に使うので奇麗に荒い、薪で熱して準備緒OK
摘んだ葉を入れるとパチパチ音が鳴り、だんだん葉の水分が蒸気になって沸き上がります。
そうする事で葉の酵素を止めた茶葉を釜から出して、ゴザでも敷いた土間で揉み込んで、
また釜で乾燥させていく…
そうして出来るのが釜炒り茶。
自家消費のお茶だったんですね!幻なわけだ!
このような形で、九州の山の中では製法が伝わってきていました。
余所の土地では換金作物なので嗜好品として進化したり、大量生産の機械化が起きたりしましたが、その波が九州の山奥に伝わるのは戦後です。
戦後になって、釜炒り茶の機械化が進み自動の炒り機も生まれたのですが、それまでの釜炒り茶は手で炒って作る手炒りが主でした。
【 釜炒り茶二大産地! 佐賀嬉野と熊本宮崎 】
釜炒り茶はその炒り方に違いがあり、大きく2箇所に分別されます。
佐賀の嬉野と熊本から宮崎にかけての山中、高千穂、日之影町、五ヶ瀬といったあたりが二大産地です。
炒り方の違いは、釜の向き。傾斜の角度を付けるかどうか。
佐賀の釜炒り茶は少し傾斜が付くので、くるっと丸まった形になります。
これを嬉野製法と言います。
熊本や宮崎の山中では釜は水平です。そのため、お茶はぞうきんをしぼったような不均一な形になります。
これを青柳製法と言います。
正直、一般人の目線ではあんまり違いがないのですが、青柳製法の方が作るのに難しいです。
傾斜がない分、茶を均一にするのが難しい…。
宮崎の職人さん達はほんと凄いと尊敬します!
香味への違いは製法よりも、作り手のコンセプトやお茶の品種の方が違いが大きいような気がします。
【 釜炒り茶の味はどんな? 注目すべきは釜香! 】
釜炒り茶の最大の特徴は、釜香かまか と言われる香りです。
お茶の葉を最初に釜に入れた時に付く香りで、とにかく芳ばしい!
中国の緑茶も釜で炒って作るのですがソレに比べても強い香りを持っています。
釜香の凄い所は、だんだんと煎を重ねてから出てくるところ。
一番最初の行程で生まれる香りなので、お茶の葉が開いてこないと表にでないんです!
釜炒り茶を飲んだ時に、最初に感じる香りは、実は釜香ではなく表面の火入れの香りです。
何度も飲み進める事で味が変わっていくのが日本茶の良いところですが、釜炒り茶の特徴は香りが変化していくところにあります。
香りが変わっていく事を楽しむお茶って日本茶にも中々ありません。
とても面白い釜炒り茶。是非挑戦してみてください!