【 なぜだか話が通じない番茶のナゾ 】
番茶ばんちゃ は、日常飲みのお茶です。
一昔前、昭和の家庭ではお茶と言ったらこれでした。
実は日本人がお茶を昔から飲んでいたのは事実なんですが、本格的に煎茶を飲み始めたのは戦後、高度経済成長期からなのです。
それまでのお茶は高級品として珍重されていて生産もそんなにありませんでした。
贈り物だったんですね。
昭和の家庭では急須で煎茶はお客様用。自分達は番茶です。
土瓶で大量に入れて、湯を次ぎ、1日中同じお茶を。またはヤカンでお茶を煮だして飲んでいました。
今でも東北や北海道の端の方ではそんな習慣の村があったりします。
ちなみに私の家では昭和30年頃の日常飲みは紅茶だったそうです。
その頃は日本でも紅茶を作っていて、そのB品をヤカンで煮だして飲んでいたのだと聞いています。
玉露だけでなく、煎茶もその頃高級品で販売して生計を立てていたのでしょう。
話が逸れてしまいましたが、番茶は日常のお茶です。
そして、番茶こそ人によって話が噛み合ないお茶の代表です!
それはあまりにも生活に密着しているがために、地方毎に番茶の言葉で指し示すお茶が違うから。
例えば、関西ではほうじ茶の事を番茶と言います。
静岡では秋の葉で作るお茶を指します。
業界では刈り番茶とか、親子番茶、なんて言葉もあります。
新潟ではバタバタ茶とかいう変わり者もいたり…
番茶の一言の指し示すお茶は実はきりがない程の種類があるのです!
会話が成立しないのも納得です。
【 番茶の共通点って何? その製法と特徴 】
ナゾだらけの番茶。
その秘密を解くために、今までの通り製造方法からアプローチしてみましょう!
製法として、番茶は秋の葉や新芽を摘んだ後の固い葉で作る日用のお茶です。
どの地域の番茶もこの点では共通しています。
どの番茶も、大きく成長した固い葉で作っています。これを、新芽を子供に見立てて、親葉と呼びます。
固く大きな親葉で作るので、番茶は見た目が大きいです。
新茶を育てた親葉も固く大きい葉ですし、夏にぐんぐん成長した秋の葉も固く大きい。
そして、それを焙煎したお茶が関西のほうじ茶なので、やっぱり原料は固く大きな葉です。
意図的に大きな固い葉を摘んで蒸しながら作るのが番茶作り。
お茶の木は一年中葉をつけているので理論上は一年中作れます。
とは言え、ほとんどの番茶は秋摘みです。実はおーいお茶や伊右衛門のお茶は秋摘みがほとんど。
普段知らないうちに日本人は番茶をがぶ飲みしているのです!
効能としては、秋の葉は春に比べてカテキンが多いので健康にいいお茶です。
また、固く大きな葉は柔らかい芽に比べてカフェインが少ないので、低カフェイン茶になります。
嗜好品としての煎茶とは違う日曜飲みのお茶が案外健康に良いので日本の平均寿命は男女ともに80歳を超えているのかもしれません。
また、煎茶や玉露を作る時に誤って混ざった大きな葉を選別して売ることもあります。
これはアタマとか大アタマと生産者が言うお茶で、集めてお店では番茶として売っていることも。
以上の事から、番茶とは固い大きな葉で作るお茶 と理解してもらえればだいたい間違いなしです!
【 こんなにたくさんあるの? 日本の番茶は地方色濃厚! 】
固い大きな葉でできる、といったアバウトなくくりのお茶、番茶。
日常飲みのお茶故に地方地方でかなりカスタマイズされています。
例えば、新潟では番茶を青柳といって売っています。日常のみで好まれるそうです。
京都や奈良では焙煎してほうじ茶に。番茶=ほうじ茶なのはこの地域の特徴です。
特に京都は京番茶という燻し香の付いた番茶が独特で、食後に出てくると他地域の人は驚きます。
一方静岡では番茶と言ったら秋のお茶。大柄に仕立てて強火火入れをしたお茶を土瓶でさっと飲みます。
お茶の生産地域では煎茶が豊富なのであまり好まれないのは、鹿児島や三重とも共通です。
これらの地域では換金作物としてお茶が増えたので土着の番茶文化はあまり残っていません。
地域密着型の番茶が残っている地方も多くあります。
島根のボテボテ茶、富山のバタバタ茶、沖縄のブクブク茶といった泡立てて飲む番茶もあります。
徳島の阿波番茶や高知の碁石茶はプーアル茶と同じ菌で発酵させるお茶。愛知の足助の寒茶のように冬に作るお茶もあります。
正確にはちょっと違うのですが、富士山まる茂茶園では、1年で一番寒い大寒の日の前後に作る大寒茶が好評です。
これらのお茶はおいおい説明するとして、まずは固い葉で飲む番茶の健康効果を余す事なく取り入れる入れ方、お伝えしましょう!
低カフェインで子供と一緒に飲める番茶。扱いを是非身に付けてほしいお茶です!