【 煎茶と玉露の間の子 最近噂の冠茶とは 】
最近、冠茶 という名前のお茶を見かける事がありませんか?
昔からお茶を愛飲してる方には聞き馴染みのない言葉じゃないでしょうか?
そもそも、冠茶。これなんて読むのか疑問に思う方も多いかと思います。
これは、 冠茶・・・かぶせちゃ と呼びます。
地域やお店によって、被せ茶とか かぶせ茶 おおい茶 等色々な呼び名があります。
私は冠茶と呼んでいるので、以下冠茶で統一して説明します。
皆さんが日本茶、お茶、と言って飲んでいるものは、ほとんどが煎茶。その上位に位置しているお茶が玉露。
冠茶は、煎茶と玉露の間の子です。その味や香り、見た目もどこか煎茶や玉露に似ています。
買う人にとっては、困ってしまうかもしれません。
どうしてこんな紛らわしいお茶が生まれてしまったんでしょうか??
【 玉露貴重すぎる問題 】
冠茶の誕生に大きな役割?を果たしたのが、玉露貴重すぎる問題です。
玉露の記事にあるように、玉露は大変希少なお茶です。
煎茶の茶葉と玉露の茶葉は、同じお茶畑で栽培出来ますがその栽培方法が全く違います。
玉露の原料は春の葉に光を当てないで栽培するお茶の葉で、煎茶の原料は春の日差しを浴びてすくすく成長したお茶の葉。
光を与えるか遮るかの違いで玉露になったり、煎茶になったりします。
光を遮るような栽培方法を、被服栽培と言い、それ専用の畑を覆い下茶園と呼びます。
この覆い下茶園、実際はどのようになっているかというと、畑の中に竹や金属の棒で棚を立てます。
その棚の上に稲藁で作ったシートをかけて光をさえぎる、といった仕組みです。
昔は全部稲わらで編んだコモ というシートを使いました。
冬の間にコモを編むには大量の稲藁が必要ですので、必然田んぼを管理する豪農やコモを買い取れるお金持ちにしか用意出来なかったのです。
以上の理由から明治維新の後に被服栽培は技術としては民間に開放されたのですが、設備にお金と労力がかかるので玉露の生産は増えずにいました。
戦後になっても、
『玉露はやっぱり違うよね!』
という地位を維持したまま、高くて普段は飲めない貴重なお茶として今に至ります。
【 新素材の開発から生まれた冠茶 】
戦後になって石油を原料としたプラスチックや化学繊維といった新素材が日本人の暮らしに加わってきました。
その中には業務用の農業資材もあり、お茶に限らず農家にとって待望だった光を遮る素材が開発されたのです。
それが寒冷紗と呼ばれるもので、軽くて丈夫で安いと三拍子そろった優れもの。
これをみた農家は思うのです。
コモ、編まなくていいじゃん!
これを被服栽培に使おう!
これなら棚がなくても使えるじゃん!
そうして、棚を作らずに直接お茶の木にかける方法で昭和50年代頃から出来たお茶・・・
これが冠茶です!
【 冠茶って玉露や煎茶とどう違うの? 】
冠茶とは、玉露のように被服栽培をしながらも、玉露とは違う方法で行う事でちょっと違った味香りになっているお茶です。
でも、その違いははっきり誰にでも分かるかというとかなり微妙なところです…
なぜなら先ほど冠茶は煎茶と玉露の間の子だと下記ましたが、どちらに似るかは生産者次第。
実は現在市場に出回っている玉露、冠茶、煎茶はその境がかなり曖昧になってきていて、私も自分で飲んでみないと分かりません。
もし皆さんがこれって玉露? とかこれって煎茶なの? と疑問に感じたお茶がありましたら是非教えていただきたい。
私自身の勉強も兼ねて飲んでみます!
玉露、煎茶、冠茶の明確な違いは栽培方法で決まり、少し複雑なのです。
【 冠茶の作り方はどんなもの? 】
冠茶は煎茶や玉露同様に蒸したお茶の葉を棒のような細長い形に乾燥させて造るお茶です。
煎茶は蒸す時間の違いで、3つ
- 浅蒸し茶
- 深蒸し茶
- 普通煎茶
に大別されますが、玉露に関してはほぼ浅蒸し茶。
では冠茶はどうかというと、ここは煎茶に似て、浅蒸し茶風から深蒸し茶風まで多様です!
新しく生まれたお茶なので各地で色々な挑戦をしている最中です。
玉露の生まれは京都ですが、冠茶の生まれは三重や鹿児島。
振興産地の努力から生まれたお茶です。
昔の産地のような強いブランドがない中で、奇麗なお茶の水の色や渋味のない味を作る為に生まれたのです。
最初から明確に覆いの味と香りを出す為に作る玉露と違い、目的が少し違うため光を遮る時間が短いのも特徴です。
【 冠茶の味や香りの特徴はどんな? 】
味の特徴として、玉露同様に煎茶と比較して渋い味が残りません。
これは渋味の成分カテキンが増加するのを光を遮る事で抑える事が出来るからです。
春先の葉に多く残るアミノ酸の分解も同時に抑え、結果的に煎茶よりも旨味の強いお茶になります。
玉露との違いは、旨味と甘味を持ちますがそこに煎茶に似た爽快な渋味も加わります。
香りは玉露程の強い海苔の香りはしません。
ちょっと煎茶と違うな…
と思う淡い香りです。
香りに好き嫌いがでる玉露と違い、一般に好まれるには丁度いい個性です。
見た目は青黒く光っています。
光沢があり、すべすべっとしたものが最上級です。
良いものはお茶の葉の時点で香りが良いのも特徴で茎等の混ざりも少ないとなお良しです!
抽出したお茶の色は曇りのない薄い黄緑から濃厚な緑まで様々です。
共通するのは始めの一杯目、口に入れた瞬間に濃厚な旨味が感じれます。
これで本当にお茶なのか?
と思うかもしれませんが、この味は消して添加物は入れていません!
玉露と同様にお茶の木に本来ある力を生かした栽培方法、製造方法、それによって生み出された天然の旨味。
伝統的な日本の食文化に根ざした強い旨味のある飲み物。
そこに混ぜ物は一切なし、というのが日本茶の凄さなのです!
最近は少しずつ世間に冠茶の事が浸透してきてますが、どのようなお茶なのか、疑問の解消になりましたか?
玉露と煎茶のいいとこ取りのお茶が生まれたのは、戦後の新素材開発と肥料の高機能化のおかげです。
ぱっと見て分かりづらくても、日本茶もちゃんと日々進歩しているんだと感じていただきたい。
そして、是非飲み比べてほしいです!