【 日本茶の始まりのお茶、抹茶とは 】
抹茶…まっちゃと呼びます。
海外でもすでに、MATCHA として浸透しているこのお茶、日本茶=抹茶と覚えている海外の方が急増しています。
ハーゲンダッツの抹茶味やスターバックスコーヒーの抹茶フラペチーノ、抹茶入りの玄米茶や、綾鷹のような抹茶入りのペットボトルもあり、世間ではここ10年程でかつてない抹茶ブーム来ていますよね。
一方で、茶道の世界のような芸術品だと扱われ、日本文化と言えば抹茶!といった考えも強くあります。
茶室でシャカシャカ立てた御薄茶を一服いかが…?
なんて一度は体験してみたい!
そんな、身近にあるけれど何だか凄いような気もする、抹茶が今回のテーマです!
さて、玉露の時にも書きましたが、玉露と同じように生産者は普段抹茶を飲んでいません。
煎茶は毎日のように10杯とか飲んでいますが…これの理由も玉露と同じ。
理由は3つ。
1つは、やっぱり玉露同様に、抹茶は高いお茶だから!
自分で飲むには惜しいほど高値のお茶なので売ってしまい手元に残りません。
2つ目に、作っていないから。
玉露の生産地と同様に、抹茶の生産地ははかなり限られています。
煎茶を作っている方でも抹茶はほとんど作っていません。
手元にないので飲んでいない。よく知らない。そんな不思議なお茶。
そんなところも玉露と似ています。
3つ目に、作れないから。
実は抹茶の名前を得るにはいくつかの条件があります。
その全てをクリアした純粋な抹茶を農家は作れないのです。
何の事か分かりにくいですが、これが世間に抹茶がたくさんある理由です!
農家も普段飲まないお茶、それが抹茶。
なのに、何でスターバックスの抹茶フラペチーノや、ハーゲンダッツの抹茶味アイスのように、世間にはこんなに出回っているの??
そんな抹茶の疑問に切り込みます!
【 そもそも、抹茶ってどんなもの? キーワードは飲み方! 】
では、そもそも抹茶ってどんな意味の言葉でしょうか?
この対比にくる言葉は、実は煎茶です。
古代中国の宋の時代に伝わった粉末を立てて飲む方法。ソレ専用のお茶の事を抹茶と言います。
明の時代以降に普及した、急須で煎じて飲む方法で生まれた呼び名が煎茶です。
よく調べると、歴史的には抹茶の方が早く日本に伝来していたんですね!
煎茶は新しい飲み方だったんです。
伝わってきた当時のお茶は今の抹茶とはやっぱり違うのですが、茶筅(ちゃせん お茶を立てる道具)のような道具でお茶を立てて飲む方法は変わりません。
この抹茶の飲み方は、お茶が薬として伝来してきた事に始まります。
茶碾、ちゃてん、というお茶を粉にする道具でゴリゴリお茶を粉にして茶碗に入れ、湯を注ぐ。そして道具で立てて飲む。そんな飲み方と、そのためのお茶の作り方が鎌倉時代の日本に伝わってきました。
抹茶を日本に伝来したのは、臨済宗の開祖、栄西だと言われています。
中国、宋での修行の帰りに茶の種を持ち帰り各地に植えた伝説や、彼の記した「喫茶養生記」にはお茶の製法や種類、飲み方が書かれています。
そんなわけで、日本にやってきた抹茶。この当時のお茶は湯の色が茶色でした。
今はお茶の湯は緑色していますよね。
これは後世の改良によって生まれた新しいお茶の色で、昔は別の色だったのです!
実は茶色って言葉は、昔の色のまま残っているんです。
じゃあ何でお茶の色は緑になったの?
それは時代の中でお茶の木の新芽が光を遮ると濃い緑色にあると判明してその栽培方法が確立したから。
それが、玉露の製法と同じ被服栽培と呼ばれる方法です。
【 衝撃の事実…抹茶の葉っぱは玉露の葉と同じ!? 】
実は、抹茶の原料の茶葉は玉露の茶葉と同じように育てています!
玉露のテーマの記事と重なってきますが、改めて説明すると、玉露が貴重なお茶である理由は玉露の大本になる玉露茶葉の作り方にあります。
煎茶の葉と玉露の葉は栽培方法が全く違うのです!
玉露の原料は春の葉に光を当てないで栽培するお茶の葉です。
一方、煎茶の原料は春の日差しを浴びてすくすく成長したお茶の葉。ここに最大の違いがあります。
この、光を遮るような栽培方法を、被服栽培と言います。
お茶の木に太陽の光が射さないように、被せものをする事からついた名前です。
玉露の葉を作る、被服栽培の出来る茶園を覆い下茶園、煎茶のような葉を作る茶園を露地栽培園と言います。
そして、抹茶の茶葉も、玉露の栽培方法と同じで光に当てないで育てた葉っぱです。
ですから、抹茶も玉露と同じように手間暇のかかった貴重なお茶です。
農家が自分で飲まないのも納得です!
【 抹茶ってどうやって作るの? 】
現代の抹茶は蒸したお茶の葉をそのまま乾燥させて、石臼で挽いたものです。
煎茶や玉露のように棒のような細長い形に乾燥させて造るお茶は最新式、抹茶は摘んで、蒸して、乾燥させて、挽く。ここ数百年このスタイルです。
蒸してそのまま乾燥させたお茶を、碾茶てんちゃ と言います。
伝統的に、抹茶は碾茶を石臼で挽いたものです。
抹茶の産地は、政府のお抱えとして覆い下茶園で抹茶を作ってきた宇治、明治維新以後に抹茶作りを始めた愛知の西尾が主な産地でした。
冠茶の記事でも書きましたが、戦後になって化学繊維の軽量な資材を使って原料の被覆済み茶葉の大量生産が出来るようになりました。
また機械技術の進歩で石臼よりも細かく、大量に粉にする機械も生まれました。
そうして今では静岡や三重でも抹茶の原料を作っています!
このような新しい生産方法での抹茶は従来の伝統的な製法の抹茶と区別され、食品加工用抹茶として販売されています。
昔ながらの覆い下茶園の茶葉で作る抹茶は全体の5%程で、ほとんどが茶道のセレモニー用です。
新素材での遮光によって作る食品用抹茶が、ハーゲンダッツやスターバックス、アイスやお菓子に使われています。
貴重なはずの抹茶がなぜかたくさんあるのにはこんな理由があるのです!
もちろん、伝統的な製法、覆い下+石臼の抹茶の方が品質は素晴らしいのです。
皆さんも一度はこれを味わって安い量産品との違いを感じてほしいです!
【 区別の難しい抹茶の実情 】
さて、最近では粉末の機械が良くなってきたので煎茶や玉露を粉にする事も可能になってきました。
これらのお茶は粉末茶や挽き茶と言われる事もありますが、事実上抹茶として扱われてるケースもあります。
上質な玉露の挽き茶は実は下手な抹茶よりも美味しいお茶です!
抹茶の定義は、例えば京都では「碾茶炉を通した茶葉を挽いたもの」となり、覆いの有無を問わなかったり、日本茶業中央会では「覆いをした茶葉で作る茶を粉にしたもの」として覆いを必須、粉にするには石臼以外の機械もokだったりマチマチです。
これは規格を定める前に一気に抹茶需要が拡大した為で、今後抹茶とは何か?が変更する可能性があります。
何でも抹茶と言えば売れてしまう、売ってしまうので無法地帯です…。
とは言え、皆さん一人一人の消費者としては、抹茶の味香りを楽しめるものが本当の抹茶でいいんじゃないでしょうか。
産地や、生産者から選んで信用出来る方のお茶を楽しんでみてください。
【抹茶の味、香り。 良いものが美味しいとも限らない! 】
抹茶の香味の特徴は何と言ってもその色。濃緑の粉が溶け出した液体は海外の方には驚かれます。
これは、植物の葉の色をそのままに保存する技術の賜物。
日本茶が何で緑なのか聞かれたら、
「木々の葉の色をそのまま残す技術が日本にはあるから」
と答えてください!
香りの特徴として玉露に似た香りがします。
独特の海苔のような香り、この香りは好き嫌いがけっこうあります。
味は甘味と苦み。品質がいいもの程甘味があり苦み渋味が少なくなります。
ですが、一般に抹茶味といえばミルクが加わってますよね。
その相性を良くするには案外苦味が必要で、食品用の抹茶は苦味を大切にして作っています。
もし、自分で抹茶ミルクで飲みたい!という方がいたらそこそこの値段の抹茶で十分かもしれません。
本質追究したい方は是非一度良い抹茶を飲んでほしいです。
【 抹茶の飲み方 立てる? 点てる? 】
お茶は元々が献上品ですので、ここぞという時に淹れる事が出来ると周囲の覚えも変わります。
それが抹茶だったりすると尚更です。
茶筅でさっといれるとかっこいいでしょう。是非覚えておきましょう!
ちなみに、抹茶を立てる、点てる、二種類の表記があります。
古いのは「立てる」の方で、点は江戸時代以降の茶道の表記です。
私は、点前てまえ を行う茶道に関する場合は点てる、普通に飲む方法を指す場合に立てると表記するのがしっくりきます。
粉末にして飲む方法は、茶道500年の歴史の10倍、5000年前からあるのですからこちらを優先です!
抹茶の立て方は難しいように感じますが、慣れると煎茶よりも簡単になってきます!
是非覚えて、海外の方に
This is real Japanese MATCHA!!
と振舞ってください!